あほろばの手記

生死確認かチラシの裏に書くような散文置き場

想念と情念の狭間で

冬の夜。
それは雲が垂れ込めようとも凛とした大氣に不純物は無く、光の粒子が何者にも邪魔をされず遠くまで光を届けている。
空の色は夜の海の色と同意義であり、それを映す私の瞳も暗い胡乱な色を見せて真偽を確かめようとする意志を塞ぎ欺瞞も怠慢も何もかもを飲み込むかの様相を示している。
頼りなく当ても無い自身は寒明けぬ空の下にたたずみ、大氣は容赦なく身を削り体温を奪っていく。
私は瀕死のカナリアのように胸を震わせ、心ちぎれ途切れ途切れの想いを大氣に解き放つ。
ここにあるはずのない詩を詠う。
如何なる叫びも形を成していない想いで在る内はどこにも響かず聞こえるはずも無い。
寒さに縮む体躯の中に宿る焔は音も無く、静かなる冬の深夜に誰彼知る由も無い。
ただ想念にそれはあり、あるがままの詩が心の旋律と相成りて自身の存在を確固たらしめるに至る。
今はまだ生まれていないあるはずのない詩を寒風の中で詠い続ける。



想念よ、詩を詠い朝を呼ぶのだ。
ついえることの無い終わり無き夜明けを。



例え終わり無き日々が怠慢を与え、鎧と化した想念が骨肉を砕き、刃の如く研ぎ澄まされた情念が自身を駆逐し、如何なる大過に遭いかけがえの無いものを失おうとも焔は消えることなどありはしないのだから。