あほろばの手記

生死確認かチラシの裏に書くような散文置き場


「はじまりの日」(仮題) No.1


四年ぶりに見た君はたくましくて大きくてまるで様子の違うから、何があったんだろうと想像しちゃう。
君の瞳から優しい光が溢れてその光が私の瞳に入って暗く冷たい塊が溶けて、温かな光の温度があたしの身体の中をめぐって指先にまで伝わってくる。ああ、ホントに、温かい。
眩しすぎて視線が合うだけなのに次にどんな君が見れるのかとドキドキ期待しちゃうよ。ずーっとその笑顔を見ていたい。ずっと、ずっと、この陽が落ちても、陽が昇っても。もっとずっと。
あたしも変ったと思うけど成長は自分じゃよくわからなくて上手く言えない。仕事の方は見習いだけどパティシエになれそうだしとっても順調。身体は女らしくなったと思う、トモコにはバストサイズ負けちゃうけどね。だからあたしのことをもっともっと知って欲しいよ、変ったあたし、変らないあたし、変った君が見つけてくれる隠れたあたし。


君に逢って再会して一番変ったことと言えば、もう無理して笑わなくていいこと!それが一番!





君から握ってきた大きな手の平はあたしの手を大きく包む。
パティシエだって力仕事なんだからわりと手もしっかりしてるはずで、あの頃の君になら絶対負けないと思っていたのに。もう力じゃ勝てない。
大きな手は優しく握り返してくる、頼りないと言うわけでもなく壊れ物を掴んでるみたいに、そっとそっと指を絡ませてくる。
ぎゅっとあたしから力を入れるとぎゅぎゅっと返してくる。
とまらなくなって二人で会話もなくぎゅっぎゅ、ぎゅっぎゅやりあう様はまるで子供のよう。

君があたしを見ている。
あたしが君を見ている。

四年の月日をかけて手に入れた、これがあたしたちの関係。
あの時出来なかったことを、今、二人で、たしかめるの。
過ぎてしまった時間は取り戻せない、だから今度は、ゆっくりと、時を、とめて・・・