あほろばの手記

生死確認かチラシの裏に書くような散文置き場

雨の中でささやく言の葉は 2009年07月25日13:52

城のすすきの波の上には
伊太利亜製の空間がある
そこで烏の群が踊る
白雲母〔しろうんも〕のくもの幾きれ
    (濠と橄欖天蠶絨〔かんらんびらうど〕、杉)
ぐみの木かそんなにひかってゆするもの
七つの銀のすすきの穂
 (お城の下の桐畑でも、ゆれてゐるゆれてゐる、桐が)
赤い蓼〔たで〕の花もうごく
すゞめ すゞめ
ゆっくり杉に飛んで稲にはいる
そこはどての陰で気流もないので
そんなにゆっくり飛べるのだ
  (なんだか風と悲しさのために胸がつまる)
ひとの名前をなんべんも
風のなかで繰り返してさしつかえないか
  (もうみんなが鍬や縄をもち
   崖をおりてきていゝころだ)
いまは烏のないしづかなそらに
またからすが横からはいる
屋根は矩形で傾斜白くひかり
こどもがふたりかけて行く
羽織をかざしてかける日本の子供ら
こんどは茶いろの雀どもの抛物線
金属製の桑のこっちを
もひとりこどもがゆっくり行く
蘆の穂は赤い赤い
  (ロシヤだよ、チエホフだよ)
はこやなぎ しっかりゆれろゆれろ
  (ロシヤだよ ロシヤだよ)
烏がもいちど飛びあがる
希硫酸の中の亜鉛屑は烏のむれ
お城の上のそらはこんどは支那のそら
烏三疋杉をすべり
四疋になって旋轉する

宮沢賢治/マサニエロ






今日一人で行くことになったということは

一人で逢い来いと貴方は考えているのだろうか

一年間あの場所にさえ行けなかった私がだ

姉貴面していた私が怖気て行けないなどと思いつきもしないだろうな


私と一緒に仕事していた所為で貴方の好きな飲み物が私のそれと誤認されて貴方の好きでもないものが手向けられてる話を聞くと申し訳なく思う

仏前には花とわずかばかりではあるが線香代の餞別を持っていくよ

日常は変わらず貴方の居ないことがぽっかりと穴を開けている

誰もがいつかは戻ってくると心の奥で望んでいる



今日は貴方の名前を呼ぶとしよう

貴方の往く道に差し支えなければだけど